千葉ルック20周年についてチンピラ詩人カオルのかなり饒舌な戯れ言」


第1章 パセリ

まるで「そんな法律」があるかのように
打ち上げの席やレストランなどでパセリは皿の上に必ず残される。
どうしてだろう。
カオルはパセリが好きなのでたくさん食べられて嬉しいが。

ある人がカオルのこんな疑問に答えてくれた。
「カオルさん。パセリは使い回しだから。食べない方がいい」
オレは「ふうむ」とうなずきながらぶーたれる。
「使い回しだから不潔か。
 でもオレ様は普段から毒の結晶タバコで鍛えているので
 3日ぐらい使い回されたパセリなんぞでどうにかなるような
 やわな肉体ではないぞ。がはははは」

オレは思う。
もしそのパセリが使い回しだったとしたら。
たぶん他の料理や経営の仕方も
「パセリを使い回すようなレベル/その程度のモチベーションで
 調理されているに違いない。
 切っていて床に落とした刺身にふーっと息を吹きかけて出してるかも」と。

バンドマンよ。
キミはなぜパセリを残す?


第2章 マイク

千葉ルックのマイクは臭くないどころかよいニオイさえする。
どうしてだろう。
それは毎晩ライブが終わった後に
ルックのスタッフがいのちがけでマイクを綺麗に洗い掃除しているからだ。

「ステージを見物する側のヒトビト」は首を傾げているかもしれないな。
「そんなの当たり前じゃないの?」と。
確かにそうだ。
料理店が「ウチの店は毎晩かならず調理器具や食器を洗います。
 また厨房の床や油汚れやフォークも洗っています」と言っても
オレも「あたりめーだろ」と答える。

ところがだ。
超ところがだ。
その「あたりまえ」をしていないライブハウスの方が圧倒的に多い。
週イチぐらいのところや致命的に汚れるまで掃除しないとか
ヒドいところは買ってから一度も洗ってないという店もある。

そういう店のマイクは物理的に臭い。
数日前のビジュアル系の口紅が残っていたりする。
さらにチンピラ詩人カオルの鋭敏な嗅覚は唾液臭以外の悪臭も感じとる。
「軟弱インフルエンザ菌/ニセモノウイルス/腰抜けシャウト菌」など。
だからそう言うライブハウスで唄っていると
それらの混合腐敗臭ウイルスに感染してロックが唄えなくなる。
感染を恐れてオレはそういうライブハウスからの誘いから逃げている。

どろん。

でもルックのマイクは安全で清潔だ。
だからオレは気持ちよくロックできる。
また「毎晩マイク命がけで洗うぜモチベーション」が店に根付いていて
チラシは綺麗に張られているしトイレも綺麗だ。
3流ライブハウスの事務所でみかけるような
「バンドのCDをハダカで光ってる方を机に直置き」とか絶対にない。
店長の趣味でエッチなポスターなどが少々事務所内に展示されているが
可愛い子ばかりなのでオッケー。事務所内はすべてが綺麗に整理されている。

余談。
カオルの友人にPAをやるヒトがいる。
かなり頑固でうるさいヤツなのだが
あるとき「ルックの機材についてのはなし」になった。
友人は仕事でバンドについて1度ルックでPAをしたらしい。
友人は「ルックのPA卓はガリ(ノイズ)がまったくないんです。
 タバコもオッケーの店なのにメンテナンスが素晴らしい。
 たいてい他の店で仕事をさせてもらう時は失望するのですが
 ルックは本当に機材を丁寧に大切にしているからよい音がする」と。

オレはまるで自分の手柄のようにタバコをプカリとやりながら
「だろー。くしし」と答えたことを付け加えておく。


第3章 ヒロシ

いのちがけのオトコである。
アドレスも「命がけドットコム」である。
名刺は黄色く可愛い鳥の絵が描かれていてる。
それらはすべて「ヒロシとんち」技である。
見事なくるくるパーだ。
それらをみて「ドン引きの業界人」とかいるのだろう。
でもそれがヒロシの狙いである。
「このトンチがわからんようなおバカ様はルックでなくていいし」と。

オレが「唄う人間」としてヒロシさんと関わってまだ7年ぐらいだが
彼のような命懸けのオトコに命懸けで応援して頂けるのは
勲章を100000000000000個貰うより誇らしい。
勲章なんぞただの飾りだ。

オレの知る限り
「同じ店主/ブッキングマネージャーで20周年以上の店」は
名古屋のELLと他数店ぐらい。

20年とはけっこう長い。
カオルの「くだらん履歴書」と比較すると
カオルは20年間の間に約10名ほどの女性とつきあい
離婚を1度して同棲に3度失敗している。
それ以外に作詩のための取材研究(浮気/不倫など)も勘定すると
4回ぐらい殺されている。

オレはその「修羅場の数々」を「ロマンティックマジック」で曲にして
いいニオイのマイクで唄わせてもらっている。
しあわせものだ。


最終章。 バンドマン

オレは千葉ルックに「50周年」とかやって欲しい。
その頃には「15時オープン 19時スタート」になっているだろう。
腰の曲がった「ルックとロックが大好きジジババ」がまだ客で来る。
「死ぬまでロックンロールなヤツら」がまだ遊びにくるのだ。
しかし。
老人になると動作が遅くなる。

例。
受付「チケットは当日券ですか?」
お客「まえふりをよひゃくしたひゃいとうでじゅが」
受付「はい?」
ジジイの付き添いの娘がかわりに答える。
「前売りを予約した斉藤です」
受付「えーと。どちらのバンドでしょうか?」
お客「からくちゃちぇねれえーしょん」
受付「ガラクタジェネレーションズですね。
   えーと申し訳ございませんが斉藤様のお名前はありませんが」
そして3分ほどの押し問答があり
斉藤さんはすでに安井番長から前売りチケットを買っていたことを想い出す。
そして緩慢な動作でシルバー無料バス手帳の間に挟まったチケットを受付に。

カオルの適当マシーン試算では「客ひとり入場に約8分」と。

まあいい。

とにかくルックにもっと長く続けてもらうためには
我々バンドマンがどんだけガッツがあるかにかかっている。
まず客を呼ぶこと。
現在出場しているバンドが「あとふたり」呼べれば
日に4バンドとして8名。月で240人になる。
あとふたりでいい。

そして「素晴らしいライブ」をやること。
毎晩素晴らしいライブが観られたら
ヒロシの寿命はその演奏時間分どんどん伸びていくだろう。

そしてヒロドリはいつしか「不死鳥」と呼ばれ
「ヒロシの名刺」は「お宝」になる。
全国各地から「長寿安産受験金運アップ」などを目当てに
「ヒロシの名刺」を貰いにくるヤツらでルックは名所になる。
「ヒロドリ饅頭」とか販売され近隣のマンション住民は
手のひらを返したように「ルックの味方」になり
インタビュアーに笑顔でこう答えるだろう。
「騒音?ああ。オレはまったく気にしてなかったよ。
 オレはね。ルックはなんかヤル店だと信じてたよ。
 ヒロシってオトコのただ者じゃないオーラをオレは見抜いていたね」

20周年おめでとうございます。
プレゼントは「二十歳になった」ということでタバコワンカートンを。

おわり。

カオル